《健康相談室》人間の生物学的寿命
平均寿命が徐々に延びてきています。人間はいったい何歳まで生きることができるのでしょうか?
生物学的には120歳ぐらいが限界という説が主流です
現在日本人の平均寿命は、女性87歳、男性81歳です。戦後まもない昭和22年は、女性54 歳、男性50歳でしたから、70年あまりの間に男女とも30年以上寿命を延ばしたことになります。
このままのペースでいくと、人間はいったい何歳まで生きられるようになるのでしょう? 期待が膨らみますね。でも、生物学的には120歳ぐらいが限界という説が主流です。
理由は、体の細胞は限られた回数しか分裂・増殖することができないからです。ヒトの胎児から採取した細胞分裂の限界は約50回で、寿命に換算すると120年です。これを発見したのはヘイフリックという科学者で、彼の名前から「ヘイフリックの限界」と呼ばれています。
現在確認されている世界の長寿記録は、1997年に122歳で亡くなったフランス人女性で、この限界とも合致します。
細胞分裂の限界を決める要因として、染色体の末端にあるテロメアと呼ばれる構造が注目されています。テロメアは、染色体の末端を保護する役割を持つと考えられ、細胞が分裂するたびに短くなっていきます。そして、テロメアの短縮が限界となった時、細胞は死を迎えます。つまり、テロメアの短縮が寿命時計となっているわけです。
テロメアの短縮を防いで寿命を延ばすものとして、テロメラーゼという酵素が注目されています。ただ、テロメラーゼには発癌の可能性も指摘されています。癌細胞のテロメアが、テロメラーゼによって安定して維持され、短縮されず無限に細胞分裂できるからです。なかなか一筋縄ではいきませんね。
日時:2019年01月17日 10:41