[健康相談室]家族の認知症を疑った時の対応について
最近、父の物忘れがひどくて困っています。先日も散歩に出たまま帰らず、自宅から遠い交番で保護されました。昔から頑固で人のいうことを聞かない性格で、治療を勧めても逆に怒り出してしまいます。どうしたらよいのでしょうか?
よくよく伺ってみるとご本人も悩みを…
最近は認知症に対する治療の選択肢が増えたこともあり、比較的早期に治療にいらっしゃる方も多くなってきました。しかし自ら治療を望まれる方は、もともと物事に対する受け入れの良い方が多く、頑固で人の言うことを聞かない性格の方の場合は、なかなか治療に結びつかないことも少なくありません。特に、高血圧など他の疾患で投薬を受
けていない方の場合は、初めての内服薬が抗認知症薬になるわけで、その気持ちを考えると仕方がない部分もあります。とはいっても、そうした初期状態を放置すると、その後の徘徊や介護者への暴力といった対処の難しい状態につながる可能性が非常に高くなります。最近は、抗認知症薬にも貼付型(湿布のようなもの)があり、そうしたものだ
と比較的抵抗は少ないと思われます。投薬を目的とせず「診てもらうだけ」、あるいは他のご家族の診察に「付き添ってもらう」といった誘い方で、その際に医療者から認知症の存在をほのめかしてもらうようにすると、治療への抵抗を軽減することができるのではないでしょうか。ちなみに、これまでの私の経験では、頑固に「私は物忘れなどしない!」とご家族に啖呵を切っておられる方でも、よくよく伺ってみると自分自身の「変調」に気づき、不安を抱えながらも他人(特にご家族)に伝えられない悩みを抱えてい
るケースが多くあります。正面から受診を勧めるだけでなく、何かのついでに「医療機関に行ってみない?」と助け舟を出してあげるのもよいのではないでしょうか。