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≪健康相談室≫コロナウイルスの変異と毒性について
オミクロン株の毒性は低くなっているようですが、今後の変異でまた毒性が強くなることはありますか?
毒性が強くなる可能性は低いと考えられます
ウイルスには強毒性と弱毒性があります。強毒性の代表例はアフリカのエボラ出血熱で、感染すると数日で症状が重くなり、死亡率は50%にも達します。
しかし、強毒性ウイルスはパンデミックになりません。なぜなら、感染した人はすぐ動けなくなり、遠方までウイルスが運ばれることがないからです。あまりに強毒だと宿主は死に、感染は拡大しません。ウイルスにとって強毒性は不利なのです。
一方、弱毒性の代表例は、冬に流行する風邪のウイルスです。感染しても症状がないか、あっても鼻水、のどの痛み、咳ぐらいで、日常生活にあまり支障が生じません。そのため人は普段と同じように活動し、公共の交通機関などで広くウイルスが運ばれ、感染が拡大します。つまり感染が広まりやすい弱毒性は、ウイルスには好都合なのです。
こうした理由から、ウイルスは強毒性から弱毒性に変異したほうが有利なので、徐々に弱毒化していくというのが定説です。
しかし、ウイルスは作戦を考えて変異しているわけではありません。変異はランダムに生じ、より強い感染力を持つものが生き残ってゆき、毒性がどうなるかは決まっていません。でも強毒性のウイルスは症状が出やすいため、すぐに発見され、封じ込められるので生き残れません。弱毒化のほうが潜行しやすく、ウイルスにとっては有利です。
こうして変異と選択により、短期間で毒性が強くなる変異もあり得ますが、長期的に見れば感染力は強い方向へ、毒性は弱い方向へと変異します。よって、今後、新型コロナの毒性が強くなる可能性は低いと思われます。
2022年09月20日