[健康相談室]アルツハイマー型認知症とその他の認知症について
優しかった父が最近急に性格が変わり、家族に暴力を振るうように。食事の嗜好も変わり、以前は小食でしたが口いっぱいに食べ物を詰め込んだりします。これは病気でしょうか?
ご家族の方の急激な変化は、身体面でも精神面でもなかなか受け入れにくいものです。しかし早期に対処しないと、状況がさらに悪化し、家の外でも同様の行動を起こし警察沙汰にもなりかねません。さて、今回ご質問のお父様は、明らかな性格変化を来し、嗜好の変化を伴っていることが特徴的です。正確には画像診断などを経て確定診断されるべきですが、認知症の一種である可能性があります。「認知症」というと、物忘れがひどい状態を考える方が多いのですが、そうした短期記憶障害を主な特徴とするアルツハ
イマー型認知症は、全体の6割程度。残りの4割は記憶障害以外を主な症状とする認知症です。今回の場合は、その中でも前頭側頭型認知症と呼ばれる認知症の症状によく似
ています。この認知症は、アルツハイマー型認知症が脳全体の萎縮を来すのに対して、主に脳の前の部分を中心に萎縮する特徴があります。脳の前部のほうは、人間の性格を規定する領域とされ、その部分が変化することによって行動の変化や嗜好の変化を来すといわれています。一度生じた変化は元に戻らないとされていますが、それでも一部の抗認知症薬や漢方薬にそうした変化を抑制する効果があるといわれています。悩む前にまず、医療機関を受診していただいて、お父様の状態を正確に把握することが大切です。治療によって病気の進行を遅らせたり、状況が好転する可性もあるのですから。
日時:2012年07月01日 09:30