【健康相談室】自由貿易条約について~その2~
最近ニュースでよく耳にする「混合診療」について教えてください。これまでの診療と何がどう違ってくるのでしょうか?~その2~
前回は、貿易自由化によって進む可能性が高い混合診療についてご説明しました。そこで今回は、混合診療が進むことで生じる利点と欠点についてお話しします。ご存知のように、日本では皆保険制度によっていつでも望みの医療機関を受診することができます。この制度はドイツで初めて導入され、現在はイギリスとアメリカを除いたほとんどの先進国で導入されています。皆保険制度は、国民すべてが良質な医療を受けるという点では素晴らしい制度といえますが、反面、モラルの低下によって不要な医療行為を招きやすく、結果的に各国の財政を脅かす要因ともなっています。 一方、皆保険制度を導入していないアメリカ国などでは、一部の低所得者や高齢者に対する公的保険を除いて、民間の保険会社が運営する健康保険に加入する必要があります。基本的に保険会社は営利目的ですから、患者さんは指定医療機関以外で希望する医療機関を受診するのでさえ、保険会社の許可が必要だったり、保険契約対象外の治療は全額自己負担となるケースも出てきます。加えて、月々の保険料が高額であるため、アメリカでは国民の3分の1が保険に加入できない状況となっています。新たな貿易協定の枠組みが検討されるに当たり、農業など国内一次産業の衰退が懸念されましたが、海外とくにアメリカでは民間医療保険も立派な商品ですから、協定成立後は米国同様の保険体制が輸入される可能性が高く、日本でも医療格差が生じる可能性があります。ただ、皆保険制度の日本でも近年は、健康保険の増大に伴う財政悪化が大きな問題となっています。そのため貿易協定の影響がなくても、政府の財政負担軽減の目的で米国のような医療保険制度が進む可能性が高いとも言えるでしょう。